2023年3月登場。アブガルシアのレボSPロケット2500Sの長期使用レポートです。
ロケットギア!
まず、おさらい。アブガルシアのロケットとは、ロケットギアまたはロケットハイギアとも呼ばれる超ハイギア搭載機に付される名称です。レボSPロケット2500Sの場合、ハンドル1回転で108cmも巻き取ります。ゼノンの同番手ハイギア(2500SH)が88cmですから、ハイギアと比べても22%もアップしています。
レボSPにはロケットとビーストがあり、どちらもレボスピニングの第3世代です。外見はゼノンによく似ていますが、第3世代レボスピニングはリールの心臓部に大口径ドライブギアを搭載している点に特徴があります。
言うなれば、左右非対称ボディによる軽量化のメリットをストレートに打ち出したゼノンに対して、十分な軽さを保ちながらギアの口径を上げることに着目したのが第3世代レボスピニングという印象です。そして、この大口径ドライブギアの恩恵をトルクへ活かしたモデルがビーストであり、一方、スピードへ活かしたモデルがロケットです。
サーフで2500番に期待したこと
私はサーフをメインフィールドにしています。レボSPロケットの番手を2500番にした理由は、サーフで一般的な4000番ハイギアの巻き取り量が100cmだからです。巻き取り量を維持したままコンパクトなリールを使うことでラインストック量の適正化を図り、また、ライン放出時に起こってしまうストリッピングガイド(バットガイド)への摩擦やブランクスへのスラップを予防することを期待していました。
この試みは非常に上手くいきました。ラインにとって致命的なトラブルは一切起きず、安定して釣行を続けることができています。
一般的に、スピニングリールであってもスプール径が大きいほうが飛距離が出しやすいという説明を見かけることがあり、私はこのことが気になっていました。この論拠は、放出されるラインがスプールエッジと摩擦することで運動エネルギーを減衰させることにありますが、しかしながら、私の実験では2500番も4000番も飛距離は変わりませんでした。
観察してみると、4000番は放出されるラインが形成しているループが大きいため、それを整流するためのストリッピングガイドに対して摩擦が大きいように見えます。2500番のほうはラインがガイドに触れていないように見えます。まるでラインがガイドに吸い込まれていくかのように通過しているため、スプールエッジとの摩擦において不利だとしても、結果的には飛距離を低下させることはなかったと考えられます。
ただし、留意点として、スピニングリールの弱点であるラインツイストの問題は(よれ、ねじれといった問題は)、同じキャスティング距離ならばスプール径が小さいほどに増えてしまいます。ラインツイストはリトリーブ時にトップガイドにしごかれてラインの端線に集中してきます。私は1回の釣行時間が2時間程度と短いので後片付けの際にラインツイストを解消するだけで済むのですが、丸一日連続して釣りをする人は途中でラインツイストを解消した方がいいと思います。
いくつか留意点をお伝えしましたが、リーリングにおいては4000番を使用しているときと同じ感覚でワンピッチジャークやタダ巻きすることができるとともに、ロッドアクション主体の釣りでは2500番の感覚でライトリグを用いて仕掛けられるという感じです。ベストバランスを探る必要はあるものの、1つのタックルで2つの戦略を展開できるのが凄いところです。
未知のスピード
さて、私は今でこそレボSPロケットの出し所、使い所がわかってきましたが、当初は思っていた状況と違う時もありました。言ってしまえば、レボSPロケットは自分で釣りを考えるのが好きなオタク向け(良く言えばエキスパート向け)です。
最初に違和感を覚えたのは、SLSシーンでジャクソンの飛びすぎダニエル14gを使用していた時のことです。飛びすぎダニエルはブルブルとした感触が手元に伝わってくるジグなのですが、レボSPロケット2500Sでリトリーブしていると感触がなくなる、泳いでいない、ということが起きました。
原因は、いわゆる2500番の感覚で使ってしまうとリトリーブスピードが速すぎることでした。同様の原因で、シンキングペンシルのスローアクションを引き出せないことがありました。1回転108cmの巻き取り量は思っているよりも速いスピードになるので、堤防などでアクションチェックをしながらリトリーブの練習をした方がよいです。
また、飛びすぎダニエルの30gでは他の問題が生じました。それは巻き取りの重さです。レボSPロケットの2500番は、4000番クラスのスピードを持っているとはいえ、そのトルクは2500番クラス相当です。
飛びすぎダニエルは30gモデルにもなると水の抵抗が非常に大きいため、繰り返し100mも飛ばしているとタダ巻きでの回収は重労働になってきます。基本的にサーフルアーは抵抗が小さいものが一般的なため、トルク不足に気づくまで時間がかかりました。(今では、飛びすぎダニエルをローテーションに組み込むときはゼノンの4000番を使っています。)
つまるところ、同じようなスペックのリールが存在しないため、どのようなルアーを合わせるのかをアングラー自身が考えてあげる必要があるのだと思います。レボSPロケットを用いた釣りは本人にしかわからないテクニックが生じてくるので、そういった点は追求しがいがあって面白いです。
もちろんソフトベイトの釣りに強い
レボSPロケットのメリットを最大に感じるシチュエーションは、ソフトベイトを用いたサーフフィネスの釣りです。リグをリフトしてテンションフォールさせ、バイトを感じたら慌てずにロッドを寝かせて深く食わせる。さほど間を置かずにスラックを巻き取り、ガツンとフックセット! この時、スラックの回収が速いというだけでなく、回収が終わる兆しを感じ取りやすいです。
これにはトルクのなさがメリットとして働いているようにも思います。スラックがとれて巻きが重くなり始める際の微妙な変化が伝わってくるので、魚とアングラーとの間のラインテンションを想像しやすいです。
これがノーマルギアだとハンドルを急いで何回転もさせねばならず、手元がバタバタと振動してしまうため微妙な感触を捉えづらいです。ハイギアでもまだそういった感覚がありましたが、ロケットギアになると明確にメリットとして理解できるようになりました。
おわりに
このリールを手に入れた頃と比べると私の釣りは細分化してきており、スピニングリールではレボSPロケットの2500番のほかにゼノンの2500番と4000番、それからベイトリールを2機種、フィールドが同じでもそれぞれを使い分けています。
レボとゼノンの比較では、レボのほうがローターの慣性モーメントが大きいです。そのため、巻きの途中でハンドルをピタッと止めることは難しく、アクションの緩急をつけたい時にはロッドワークが不可欠です。(ちなみに、このようなリーリングアクションについてはベイトリールが断然優れています。)
逆に考えれば、慣性モーメントが大きいほど、一定速度で巻き続けることは簡単になります。スイムジグやシンキングペンシルでボトムをトレースし続けるようなシーンではレボのスピニングのほうが楽です。ただ、飛びすぎダニエルや、メタルバイブレーションのようなルアーだけは(手の疲労において)不利を感じます。リップ付きミノーも抵抗の大きなルアーではありますが、スローリトリーブで使うことが多いため問題になりません。
以上〜です! この記事がタックル選びの参考となりましたら幸いです!