予約注文していたアイテムが2024年8月30日に届きました!その名はZENON Mg BF Spool!アブガルシアのベイトキャスティングリール ZENON MG7/LTXに使用できる30mm径スプールです。
ZENON LTXの交換用スプール問題
アブガルシアの先進的コンセプトに基づいているZENONシリーズ。特にコンセプトを体現していると思われるのがZENON MG7。そのソルト対応版ともいえるのがZENON LTX。私の愛用リールです。
しかし、そこはLTX。ただの海水対応の差ではなくスプールが大きく異なります。MG7はPE1.5号150mのキャパシティを持ったバーサタイルスプール。一方、LTXは1号100mのキャパシティにセラミックボールベアリング搭載のフィネススプール。ソルトで使うにはラインキャパシティが心許ないと感じるシーンがあり、予備のスプールを購入することを検討していました。
- LTXの純正スプール
- MG7の純正スプール
- 青嵐社製の交換用スプール(2種)
これまでは以上の4種類のスプールが選択肢にありました。
純正スプールは安心感がありますが、店舗を通じて取り寄せなければならないのがネック。だって近隣の店舗にZENONが置かれてないからネットで買ったわけで、パーツだけ欲しいとお願いしにくいです…。また、青嵐のスプールはマグネット交換も必要となるため予備としての運用には向いていないと判断していました。
欲張りというか、ワガママというか。どうせ買い足すなら単なる予備ではなく、リールの使い方に広がりを持たせるアイテムが欲しい。だけど、用途が違いすぎると予備にならないし… なかなか決めきれずにいました。
最終解決者Abuworks
そんな長らくの悩みに対して、ついにAbuworksがやってくれました!ZENON Mg BF Spool だー!
Mg BF | LTX純正 | |
capacity | 8lb-50m | 8lb-50m |
ベアリング | セラミック | セラミック |
重量 | 約8.8g | 約12.0g |
ご覧のように基本はLTXに搭載されているフィネススプールと似通っているので予備として運用可能。というかMg BFをメインに置き換えて、純正を予備として携行になりますね。
マグネシウム素材を採用したことで重量が軽くなっていることも注目ポイント。1〜2インチのソフトベイトをキャストしやすくなると期待できます。また、もちろんソルト対応で安心です!
カム式可動板だと?
軽くなるだけで充分と思っていましたが、まさかの可変マグネットブレーキ機構を搭載です。
これはスプールの回転数が高まると可動板(ブレーキプレート)がマグネットに近づいてブレーキが強まる仕組み。具体的には回転方向の力をカムによってシャフト方向の力に変えて利用しています。つまり指で触って理解できるタイプの「物理」。
ほかの可変マグネットブレーキの種類としては、回転時にブレーキプレート側に生じる磁性を利用して可動パーツを引き寄せるものもあります。原理は中学理科の範囲とはいえ、なぜ動くのかわからんタイプの物理です。それらの磁性を利用した方式は作動開始時に磁界が必要なので、キャストフィーリングはあくまでマグネットブレーキらしい感じがします。
ところが、Mg BF Spoolのカム式は磁界とは無関係に作動するため、初期ポジションでマグネットが遠くても問題ありません。その場合のキャストフィーリングは遠心ブレーキに似ています。
ブレーキの調整方法
ここまでの大切な気づきとして、カム式なら可動板とマグネットユニットの可動距離をノギスで計測できるので、可動板によるブレーキの可変量をブレーキの外部ダイヤルの段数に換算することで容易に理解して運用できる、ということが言えそうです。
ブレーキユニットの可動距離 | 1.6mm |
調整ステップ数 | 28段 |
カム式可動板の可動距離 | 1.2mm |
ステップ数に換算 | 21段相当 |
手作業での計測なので誤差があると思いますが、私が持っているものは以上のとおりでした。
つまりどういうことか?…わかりやすいように作図したのでご覧ください。
ブレーキの外部ダイヤルが上図の位置ならキャスト時は終始ブレーキがかかります。意外と変化量が大きいと感じるのではないでしょうか?調整幅をフル活用している感じです。
調整方法としては、このようにMAX付近で扱えるようにマグネットを増減しておくのが理想です。ZENON LTXなら初期状態で3g程度のルアーに適正です。5〜6gならマグネットを各1個(3mmと1.5mm)外すと良いかと思います。いずれも無風または追い風の場合ですので、もしも向い風のコンディションが多ければマグネットは減らさないほうがいいかも。
一方、あえて次のように調整するのも一興です。
上図の位置では、キャスト直後の高速回転時にはブレーキがかかりますが、後半にルアーが失速する頃にはブレーキが弱すぎるのでスプールからラインが浮いたりします。
遠心ブレーキに慣れていると、このラインの浮きを親指の腹で感じながらキャストする方法がしっくりくる人もいるのでは?また、そうでなくとも飛距離を追い求めるのであればマスターしたいところです。
ところで、リール本体の話なので余談になりますが、2つの図でお気付きになりましたでしょうか?外部ダイヤルの目盛が19個しかないことに…
そう、28段階調整なのに目盛は19個なんですよ。3段で2目盛すすむ構造です。何のために?と思ったのですが、3の倍数のときのみダイヤルと目盛が一致するおかげでブレーキの値を把握しやすいんですね。
読み替えると、0〜9の10段階になり、各段階に1/3と2/3があるという見方ができます。これに慣れると、リールを上からチラッと見ただけで7〜9のどこにあるか直感的にわかるようになります。そのためにもマグネットはきちんとチューニングしておき、基本的にMAX付近で使えるようにしておきましょう。
ノー・ブランキング!
話変わってスプールの形状です。そう、ブランキング(肉抜き)がないのです。やったね!
これにより、ラインに付着した海水でスプールベアリングやスプールシャフトが濡れることはほぼないです。おかげでギアボックスへの海水の侵入が極めて少なくなりました。純正スプールだとけっこう侵入していましたからね。本当の原因は右利きで左ハンドルを使うせいではありますが、これからはそれも気兼ねなく使えそうです。
ブランキングなしで重量を減らしてあるってのが地味にスゴイですね。
意外とお安い
価格について触れるのを忘れてました。大事ですよね。
メーカー希望本体価格は¥10,000(税抜)です。私は予約で¥7,900(税込)くらいで買えました。発売後は少し値上がり傾向ですが、メーカー希望よりは安いです。
純正のスプールセットは¥6,000(税抜)だったかと思うので、Mg BF Spoolは意外とお安い印象です。青嵐のカスタムスプール(¥9,900)を割高に感じてしまうほどです。
ユーザーにとっては良心的。サードパーティにとっては破壊的。さすがの最終解決者です。
あえて買わない理由
価格に触れて購買意欲を刺激したので、今度は物欲にブレーキをかけてバックラッシュを予防しましょう。
私はMg BF Spoolを使用したことで純正スプールの良さも再確認できました。シンプルなスプールゆえの安定したブレーキ。ブランキングのおかげでラインを乾燥させやすく、ラインドレッシング(コーティング剤など)も定着させやすいです。誰が使っても、どんな状況でも、納得しやすいのは純正スプールだと思います。アジングにはキャストの初動が鈍いかなというくらいで、弱点らしい弱点はありません。トータルバランスに優れたスプールです。
一方でMg BF Spoolは、今後の長期使用において、カムの故障やマグネシウム合金の塗膜の損傷といったリスクも抱えています。これはワークスモデルであり、レーシング仕様という点については承知しておく必要がありそうです。
こんな釣りにおすすめ
ZENON Mg BF Spoolはあらゆる状況でワンランク上の体験をもたらしますが、特にこのスプールが必須と思える釣りを挙げてみます。
アジング / メバリング
総重量2〜3gのリグが主軸となる釣りですのでスプールの軽量化による恩恵を感じやすいと思います。キャスト後半のブレーキが弱まるため着水時にサミングが必要になりがちな点で、夜釣りには注意が必要です。
渓流 / エリアトラウト
こちらもルアーが軽いので。日中の釣り、かつ、近距離のため、目視でサミングする場合にはカム式可動板の効果は感じにくそうですが、回転の初動が軽くなっているのでティップのわずかな動きでもキャストできるようになっています。
マイクロショアジギング
これは異なる理由です。簡単に言えば「ぶっ飛ぶ」ようになるからです。
ブレーキがマイナスになるセッティングにおいて、空気抵抗の小さなルアー、メタルジグやペンシルは、めちゃくちゃ伸びるようになります。PE0.8号以下を巻いて丁寧なキャストをすることが条件にはなりますが、上手にできたときのキャストフィールはただただ快感です。
ライトロックフィッシュ
理由わかりますでしょうか?察しがついた人、尊敬します。
正解は、クラッチ切るとフリーフォールするからです。そんなの普通でしょ、と思われるかもしれませんが、マグネットブレーキ機で強めのブレーキ、かつ、ライトロックのためのライトリグだと、クラッチ切ってもラインが出ません。マグネットブレーキが常に効いているせいです。それが解消されます。低速回転時はブレーキが効かなくなるおかげです。
おわりに
私はMg BF Spoolが届く直前まで、ZENON MG-Xが欲しくて仕方ありませんでした。遠心ブレーキ搭載のマグネシウムボディです。でも淡水専用リール。無理を承知で使うかどうか逡巡してました。
今ではMg BF Spoolが遠心ブレーキのようなフィーリングをもたらしてくれたので、満足して心から霞が晴れました。
ふと思うのは、遠心+マグのインフィニブレーキシステムのことです。キャスト直後はしっかり抑えて、後半は適度に抑える。そういう根幹は同じなのかなと。カム式可動板にはシステムとしての名称は与えられていませんが、今後のアブガルシアのベイトフィネス機に標準搭載されても不思議ではないと思います。
Mg BF Spoolがたくさん売れたら、そんな未来もあるかもしれない… といったところで本稿を終えます。拝読ありがとうございました!