トモ清水さんが2023年に立ち上げたロッドブランド、G-TEC(ジーテック)。そのXrosSensitive(クロスセンシティブ)シリーズから『XSC-71ML+』のインプレッションおよび長期使用レビューをお届けします。
はじめに
XSC-71ML+は2023年9月5日発売で、私の手元に届いたのは9月7日。本稿の初稿時点での使用期間は349日となり、四季を通じてライトロックフィッシュゲームの相棒を務めてくれています。掛けた魚は100匹を超えたところで、それなりに良いところも悪いところもお伝えできるかと思います。
スペックと所感
さて、まずはインプレッションと答え合わせから始めたいと思います。公式サイトのスペック表を読んでいて「え?ホント?」と思った点について、この項では実際にはどうであったのかをお伝えします。
スペック表
モデル品番 | XSC-71ML+ |
モデル名称 | POWER FINESSE PLUS |
販売価格(税別) | ¥45,000 |
レングス | 7’1″ |
仕舞寸法 | 111.7cm |
自重 | 86g (11+75 *実測値) |
先径 | 1.34mm |
テーパー | ファースト |
ルアーウェイト | 3-40g |
PEライン | 0.5-1.5号 |
リーダーライン | 6-20lb |
フロロ・ナイロン単線 | 5-12lb |
推奨リールドラグ値 | MAX3.5kg |
軽さとグリップの関係
私が最初に注目していたのは軽さです。タックルが軽ければ小さな変化も感じ取れるようになるため、情報量が増えて釣りの上達につながります。ビデオゲーム風に言えば、得られる経験値が多くなるわけです。
とはいえ、常識的なタックルの重量というのは各メーカー横並びで大差のないものでした。このロッドパワー、対応ルアーウェイト、レングスならば、普通は100g以上です。ところがビックリ、XSC-71ML+は実測でもスペック通りの86gしかありません。例えば、アブガルシアのERSC-77ML-BFは109gですから、持ち替えると21%の軽量化になります。これはちょっとやそっとの差ではありません。XSC-71ML+は段違いに軽いロッドです。
一般的にロッドの重量の大部分はリールシートやグリップの重さです。XSC-71ML+はティップ側 11g、グリップ側75gです。ただ、重量が増しがちなコルクグリップを採用していながらにして、これほど軽いロッドというのはかなり驚きでした。
やや残念な点として、使い込んでいくにつれてベイトキャスティングのルアーロッドとしてはグリップが細いことに気づきました。これについては私の手が日本人平均よりも大きいことも関係してきます。細いグリップを握ると指が余るので、手のひらに爪が当たって痛みが出ます。これはジャークやトゥイッチなどの横方向や下方向の操作で問題になりました。
開発の中心であったトモ清水さんと東北アーネストの佐藤キャプテンの動画で見られるように、リフト&フォールを主体とした上方向の操作であれば問題ありません。その意味において、万能性を備えたロッドであるとはいえ、やはり基本はロックフィッシュロッドとして鍛えられた製品だと思います。
対応ルアーウェイトは本当?
スペック表によれば3gから40gまでの幅広いルアーウェイトに対応しているとあり、ここも実際はどうなのか気になっていました。結論を書いてしまうと、本当に3gから40gまで使用可能です。ただし、ウェイトに合わせてキャストフォームやスプール径・ライン号数などを調整すべきであり、その点で経験者向けのロッドだと思います。
また、一言で対応ルアーウェイトといってもキャスト可能性と操作性は別物です。
キャスト可能性について先にお話しすると3gから40gまで投げられます。これにはリールの性能によるところも大きいです。ZENON LTXの標準スプールは30mm径で約12gあるため、それほどライトリグに特化した性能ではありません。5g以上は投げやすいものの、3gになるとスプールの初動が重たく感じます。
試しにKastkingのKestrel Elite(28mm径の5.6g)にすると3gのメタルジグもアジング用の1.5gジグ単(ワーム込み2g程度)も全く問題なくキャスト可能でした。つまり、XSC-71ML+の対応ルアーウェイトの下限はリール次第と言えそうです。
(注意: Kestrel Eliteは淡水用リール、かつ、XSC-71ML+のリールシートに適合しません。)
さて、ヘビーウェイト側についても同様にリール次第なところがあります。ZENON LTXで1oz(28g)を全力でキャストするとスプールが高回転になりすぎて危なっかしい感じがします。20g以上を多用するなら32〜34mm径のリールを合わせたほうがよいと思います。ただ、XSC-71ML+のほうも30g以上となると余力は感じないので、メインに据えるウェイト帯ではないという印象です。
それと、皆さん気になるであろう飛距離に関して。地上計測で、5gメタルジグが40m以上、7gフリーリグ(ワーム込み12g程度)が50m以上、28gメタルジグは70m巻いたラインが飛行中に全て出てしまって計測不能。私は久方ぶりにベイトタックルを入手してリハビリ1年目みたいな状態なので、上手な人ならもっと飛ばせると思います。
操作性については、さすがに軽いルアーはお手のものです。ティップの強さの目安として先径をみますと1.34mmとなっています。これは一般的なシーバスロッドよりも細く、チニングロッドのような繊細さを持っていると期待できます。
使用感としては2インチから3インチくらいの小型ルアーを得意としている印象です。繊細なロッドはルアーウェイトや引き抵抗の増加に比例してティップが曲がり込みすぎて操作性を失いやすいですが、XSC-71ML+にはそういったネガティブを感じにくいくらいに強さも兼ね備えています。
14gから20gくらいのミノーやスピナーベイトを巻いてもティップに余力が残っていて、アクションを入力することもできます。30g以上になると操作性は鈍くなってきます。リグをポンッと跳ね上げるようなアクションは鈍重な感じです。ショアからのロックフィッシュゲームでは根掛かりを回避しにくくなるので、1ozクラスを多用するなら兄貴分のXSC-71Hのほうが適任だろうと思います。
T1100G採用はマスト
せっかくのユーザーレビューなのでカーボン素材の話をしても仕方ないと思いまして、あえて使用感についてお伝えしてきました。それでも一応お話ししておくと、最初に手に取った瞬間の感想は「あぁ、T1100Gっぽい」でした。T1100G採用のロッドは以前から持ってまして、やっぱりこういう感じになるんだなと。この感覚は、使ってみないとわからないかもしれません。
XSC-71ML+には、T1100G、M40Xの33tと40tが使用されているそうです。私の想像では33tが使用感のベースになっているだろうと思っています(使用比率のことではなく)。
33tは中弾性カーボンの域に置かれますが、第3世代では軽さと粘り強さの両立が可能となったらしく、ハリがあるのにグニャリと曲がるという不思議な使用感があります。軽さゆえに慣性が小さいからなのか、手首で揺らしても振動が素早く収束するので硬い印象を受けます。
ところがキャストやファイトで継続的な力がかかると意外なほどに曲がるのです。なので、曲がるロッドこそが本性であり、それなのにビヨンビヨンしない、ハリがある、という表現が適切なのかもしれません。XSC-71ML+が軽量でありながらも幅広いルアーウェイトに対応できていることの秘密の一端はT1100Gにありそうです。
各種ルアーとの相性
話変わって、この項ではルアーとの相性について感想をお伝えします。XSC-71ML+はオールラウンダーで様々なルアーに関して適性を備えています。苦手種目が少ないので、何をしていても楽しいロッドです。
テキサスリグ/フリーリグ
まずはコレ。相性バツグンです。ロックフィッシュロッドとして鍛えられているので当然ですね。私は2〜4インチのワームに3.5〜7gのシンカーを合わせるのが好きです。
メタルジグ
5〜14gのマイクロ/スーパーライトショアジギングに好適です。20〜30gになってくるとジャークで持ち上げにくいのでブレード系のほうが良さそうです。
トップウォータープラグ
5〜15gくらいのものを好んで使用しています。最も操作を必要とするタイプのルアーですが軽快に扱えます。前述したようにグリップの細さが難点であるものの、XSC-71ML+のポテンシャルの高さを感じます。
ジャークベイト
5cmくらいから扱え、10cmくらいまで好適です。トモ清水さんが使っているビーフリーズ78Sはもちろん、X-RAPやジャークソニック100も使用感が良かったです。ワンテンくらいのレギュラーサイズになるとモノを選ぶ感じです。ただ、スリーフィンガーやフルフィンガーで持った際に人差し指が金属製のロックナットに当たるので少し痛いです。
シンキングペンシル
ジャークベイトに準じるような感じですが、より小さな力でアクションするので指の痛みの問題は軽減されます。また、ヘビーウェイトはメタルジグに準じるようになり、タダ巻きにトゥイッチを混ぜて使うイメージになってきます。
クランクベイト/ミノー
潜行深度1.5mまでのシャローランナーやシャッド、シーバス用のミノーなどは問題なく扱えます。感度がよいので巻くルアーを使うのは楽しいです。ただし、レジディティーメタルグリップは指当たりが良いとは言えず、巻き続ける釣りでは自分に合う持ち方を見つける必要がありました。巻き抵抗が大きめのルアーはフルフィンガーに落ち着きましたが、トリガーが少し邪魔ではあります。
バイブレーション/スイムベイト
これも巻いて楽しいルアー。8〜16gくらいが心地よいです。シャッドテールの振動はバイブレーションよりもわかりにくいものですが、ちゃんとプルプル感が伝わってきます。これらは巻き抵抗は小さめなのでグリップ周りについて不満を感じることはなかったです。
スピナーベイト/ラバージグ
苦手を挙げるならコレかなと。そもそもMHからHくらいの強めのロッドで扱われることを想定しているルアーなのでミスマッチです。使えないことはないですが、フッキングできるかどうかわかりません。
ライトロックフィッシュゲームに最適!
この標語は大前提であったわけですが、あえて本稿のまとめとして掲げたいと思います。約1年間にわたって使用してきた結論として、やはりXSC-71ML+はライトロックフィッシュゲームで最も輝くロッドだと思っています。
というのも、ネガティブな理由から書き始めてしまいますが、30cm以上のロックフィッシュをショアから獲るには柔らかすぎるという現実があります。下の写真は私が親しんでいるフィールドの水中写真です。ボトムコンディションをご覧ください。
水深は浅く、すぐ足元まで人工岩礁の駆け上がりになっており、フッキングからランディングまで常に潜られる可能性のあるフィールドです。残念ながら良型以上のキジハタに対してはフッキングで岩礁から引き離すことができず、高確率で潜られてしまいます。
水中映像で観察してみると、岩礁のスリットに突っ込むキジハタは直進性がある泳ぎをします。ここにストップをかけてキジハタの姿勢を崩してあげるとキジハタは岩礁への激突を避けるように停止して浮上します。そして再度にスリット目掛けて直線的に突っ込みます。
XSC-71ML+では、この突っ込みに抵抗をかけることはできているものの、姿勢を崩すまでに至らないことがあります。ロッドが柔らかくて追従性が良いためです。フックアウトを防ぐことに貢献していると思いますが、ストップをかけることとの両立は難しいです。なお、あくまでフィールドの状況によるので、高低差を利用できる急深な磯や堤防、ボートロックなら問題にならないのかもしれません。
とはいえ、です。30cm未満の魚でもファイトを楽しめる、この柔らかさは非常に重要だとも感じています。そもそも小さい魚ほど数が多く、岸際に集まっているものです。1年中コンスタントに釣ることができるので、冒頭で触れた通り「得られる経験値」が違います。例えば「昨日は5匹、今日は1匹。何が原因か?」と考えるきっかけが生まれます。もしも大型狙いでボウズが続くと何が正解かわからなくなり、ギャンブルに臨むような精神状態になりがちです。こうなると釣りは楽しみというよりも、むしろストレスを生じさせます。まずは小さくともコンスタントに釣って、その上で大型の魚を狙ったらよいかと思います。
このように魅力のある岩礁帯のライトロックフィッシュゲームではありますが、この釣りはXSC-71ML+のような高性能なロッドがあってこそ楽しめるものだとも感じています。非常に根掛かりの多い釣りですから、ロッドが合っていないとストレスになるどころか全く釣りになりません。感度・操作性・パワー、この3つが適正なバランスで成り立っているロッドが必須であり、私の場合はXSC-71ML+が答えでした。
おわりに
ルアーフィッシングは魚を誘う釣りですから、強い誘いがいいのか、それとも弱い誘いがいいのか、答えを求めるには魚がいるフィールドが必要不可欠です。XSC-71ML+を手にしてライトロックフィッシュゲームに興じるうちに、そんな当たり前のことがスッと腑に落ちて納得できたように思います。
XSC-71ML+は多少の風があっても振り抜ける強さがありますし、そもそもベイトならではの多彩なキャスティングとサミングにより風に対応しやすいです。加えて、そこそこの重量まで背負えますからラフコンディションを前に釣りを諦めなくてもいいという利点も備えています。
XSC-71ML+は一年を通じて出番が多く、相棒と呼ぶに相応しいロッドになりました。一生、手放せないと思います。