アブガルシアのスピニングリール、ゼノンを使い始めて1年近くが経ちました。当初と比較してインプレッションに変化があったかどうか、レビューを交えてお伝えいたします。
ゼノンは日本向け製品
私は勘違いをしていたのですが、ゼノンスピニングリールって日本市場向けの製品なんですね。私はグローバルモデル(欧米モデル)が日本市場へ降りてきているのだと思い込んでいました。
気づいたきっかけは欧州のアブガルシアをチェックしていたときのこと。製品説明にはこのように書いてあります。
All of this makes the Japanese designed ZENON® the ultimate light weight spinning reel and something the world has never seen before.
翻訳:(前略)これらすべてが、日本がデザインしたZENON®を究極の軽量スピニングリールにし、世界がこれまでに見たことのないものにしています。
AbuGarcia EU
それで気になって米国のアブガルシアも改めてチェックしてみました。そうしたら、カテゴリーディレクターのアンドリュー・ウィーラーさんが動画の中で詳細を語っていました。
具体的に抜粋すると以下の語りです。
Obviously this reel has been designed to be ultra lightweight and ultra finessey, originally designed for the japanese market. We decided to bring it into the North American market as those techniques are really becoming ultra popular over here as well such as drop shotting, shaky heading, Neko rigging.
翻訳:(前略)言うまでもなく、このリールは極めて軽量、かつ、極めて繊細であるように設計されており、もともとは日本市場向けに設計されています。ドロップショット、ヘッドシェイク、ネコリグなど、これらのテクニックがここ北米でも非常に人気が高まっているため、私たちはゼノンスピニングリールを北米市場に持ち込むことを決断しました。
Abu Garcia on YouTube
少し補足すると、上述のテクニック、すなわちソフトベイトをカバーに投げ込んで定点的に誘う釣り、悪く言うと、ネチネチとしたセコ釣りと揶揄される釣り方は、本来のアメリカのバスフィッシングにはないものです。他の例として、バスプロの青木大介さんはパワーフィネスを解説する動画の中で、アメリカではこういう釣りはしないという旨の発言をされています。
これはなぜかというと、日本と欧米とでは「釣り観」が異なるからです。日本人にとっての釣りとは、唱歌の中で「小ブナ釣りし かの川」と表現されるような子供時代への郷愁、素朴な遊び、自然との戯れという意味合いが強いです。アジングやメバリング、エギングなどの手軽な釣りが好まれることも同様の感覚に基づいていると思います。
欧米人も子どもの頃から釣りをしますから郷愁はあると思いますが、彼らのキリスト教的道徳律においては自身より弱い動物を弄ぶことを「戯れ」とは言いません。したがって、カバーに隠れて休んでいるような弱い魚を騙して引きずり出す行為は社会的に許容されるものではなかったはずです。
ウィーラーさんの語りでは、そのような釣り方が北米でも受け入れられつつあるように聞こえます。ただし、北米アブガルシアのショッピングリストには既にゼノンはありません。今後に再入荷されないのだとしたら、やはり一過性のブームに過ぎず、北米では基本的に認められない釣り方だったということかもしれませんね。
耐久性は問題なし!
話変わって機能面の経過をお伝えします。いくつかのポイントに分けてお話ししますね。
Feathermetal™ は軽くて強い!
ゼノンスピニングリールといえばマグネシウム合金製のFeathermetalボディです。マグネシウム合金はアルミニウム合金よりも軽量かつ高価ということでプレミアム感が高い素材です。ただし、素材特性としては剛性と耐食性は劣るので、ソルトウォーターで長期使用した場合にどうなるかは気になっていました。
さて、まずは剛性についてですが、これは全く問題がありませんでした。65cmのマゴチをキャッチした時はさすがに2500番ではポンピングしなければ巻くことができませんでしたが、アカエイを相手にした時でさえボディが歪む感覚はなく、釣行後にも何ら支障は起きていませんでした。
次に耐食性について、マグネシウム合金は塩素イオンに対しては弱いものなので、ソルトウォーターでの使用には不向きとも考えられます。事実、ベイトキャスティングモデルのゼノンMG7はフレッシュウォーター専用となっていますし、なぜスピニングモデルはソルト対応なのか不思議でした。(ちなみに北米版はフレッシュウォーター専用となっていました。)
結論を書くと、ソルトウォーターで使用していても腐食は起きていません。表面塗装があるのかな? 理由は分かりませんが、ソルトウォーターで使用できるように工夫されているのだろうと思います。
Salt Shield™ ベアリングは塩ガミなし!
ゼノンはピニオンギア部とラインローラー部に撥水タイプのボールベアリングを使用することで、海水がベアリング内部で結晶化することを軽減していると説明されています。
実際のところはどうかというと、塩ガミは全く発生していません。
ただしですね、そもそも私は塩ガミを起こしたことがないんですね。同じくアブのレボSPロケットも使っていますが、塩ガミはありません。それらより昔、シマノとダイワのリールでも塩ガミしたことはないです。釣行後は必ず流水で洗っていますし、マズメを狙って出かけることが多いため1回の釣行時間は平均90分といったところ。つまり付着した海水を放置している時間が短いんですね。
加えて、ラインはバークレイのファイヤーライン系です。編み込みが溶着されている構造なので水切れが良く、リールがビチャビチャに濡れてしまうようなことはありません。ピュアフィッシング社のブランドでタックルを揃えると総合的なバランスが非常に良く、とても快適に釣行できます。
そのようなわけで、ゼノン2500SHはノントラブルで使えています。
メンテナンス性は良い
一度だけサーフに落としてしまいリールが砂まみれになりました。そのまま動かしたら砂粒を噛んでダメージになりますから、念のために分解してシャフトとギアのチェックを行いました。基本的にはメーカーにメンテナンスをお願いするのが無難ではありますが、自分でできることを増やすというのがスポーツフィッシングの意義でもありますから、失敗もまた勉強という気持ちで分解しました。
最初につまづきがあったものの、その後は実に簡単でした。そのつまづきというのはメーカー純正品であるアブ マルチツールプライヤーでは分解できなかったというものです。たぶんベイトリールには使えるのだろうと思いますが、ゼノンスピニングリールの形状には合わないためネジやナットに工具が届きません。それぞれの径は合っているのに惜しい!
結局、別途に工具を買い求めることで無事に分解できました。砂粒は内部にまでは入り込んでいなかったので助かりました。シャフト周りから砂粒を含んだグリスを取り除き、その後に純正のグリスを足しておきました。とても簡単にメンテナンスが済みました。
なお、私はリールの専門家ではないものの、個人の判断でグリスを減らしたり、粘度の低いグリスに交換したりすることはお勧めしません。個人による分解やセルフメンテナンスの記事などでは往々にして巻き感を軽くするためにそのようなことが行われているようですが、グリスの機能を理解していないか軽視し過ぎているように感じます。機械式の時計やカメラのようなものはグリスの粘度で動作タイミングが狂ってしまうのでオイルを選びますが、そのような要因がないのであれば駆動部品を保護するためにグリスをたっぷりと盛っておくのは当然のことです。
ドラグよーし!
Carbon Matrix™ ドラグも非常に良い働きを見せてくれました。
私はドラグをしっかりと強めにセットしておくのが好みです。ラインを手に巻き付けて引っ張ったときに、やっと少し出るくらいの強さです。手が痛くて引っ張れないくらいにキツめです。
これは確実にフッキングパワーを伝えるための工夫です。ナイロンやフロロカーボンの伸びを嫌ってノーリーダー、PE直結ということもよくやります。ガツン!と合わせてやるわけです。
そしてファイト中はロッドを立てっぱなしです。魚が暴れる力はロッドのしなりで受け止めます。ドラグが出ない限りはリールもガンガン巻きます。これが二次フッキングになることもありますし、貫通しないまま寄せ切ることもあります。ラインテンションを一定に保てばバレることは滅多にありません。
ドラグが仕事をしたのは、やはり青物との対決時でした。40cmオーバーのサバは力強いスプリンターです。渚に寄せられたことに気付くと沖へ向かって猛ダッシュ! 止まった状態からコンマ数秒で最高速度に達します。この時だけはドラグがジーッと出てくれてラインブレイクを防いでくれました。PE直結でしたから瞬間的な負荷には脆弱なはずですが、ロッドのしなりとリールのドラグだけで完全勝利。何度か同じシチュエーションを攻略できたので、私はCarbon Matrix™ ドラグをとても信頼しています。
価格はやや上昇か
発売当初、YouTuberが悪評を立てた影響があってか、しばらくの期間は低価格で販売されているケースもあったように見受けます。私はゼノン2500SHをAmazonで購入したのですが、その時は少し回復基調にあって¥28,000くらいでした。
ただ、ここしばらくは3万円よりちょっと上の価格帯で推移しているようです。レボSPビーストが2万円とちょっとですから、1万円以上は高いです。けれども、ゼノンにはセミハードケースが付属していますから、これを4千円と見積もるならリール本体の価格差はそう大きくないとも言えます。この価格でケース付きならお得だと思います。
なお、Amazonではアブガルシア製品がセール価格になったり、キャンペーンで決済時に割引になることもよくあるので、欲しいと思っている人はこまめにチェックしておくと良いですよ。Amazonのセール価格とキャンペーンの割引は重複するため、3万円の商品が2万5千円くらいになることもよくあります!
価格(税込) | 送料 | 確認日 |
¥33,914 | プライム無料配送 | 2023/8/30 |
ちなみに欧米でのゼノンの価格は日本円にすると¥78,000以上もします。日本だけすごく安いんですよ。オーストラリア等の他の地域に至っては販売もされていません。日本人で良かった(笑)
さてさて、おわりに小話です。
2023年の春シーズン、最も魚を連れてきてくれたのはゼノンでした。同番手のレボSPロケットも使っているのですが、いくつかの理由でゼノンのほうがオールラウンドに対応できていたと思います。ゼノンはクランキング主体、レボSPロケットはジャーク主体という使い分けに落ち着いています。それについては、いずれ他の記事で書けたらいいなと思っています。
以上、ゼノン2500SHの長期使用レポートでした!