アブから待望のサーフロッド! ソルティーステージ プロトタイプ サーフスレイヤー

最終更新 2024年6月:XSFS-1082Mの使用期間が約9ヶ月間になったため、本記事の主題を長期使用レビューに変更して加筆・再構成しました。

XSFS-1082Mの長期使用レビュー

私が使用しているモデルはサーフゲームのド真ん中、XSFS-1082M(テンハチ・エム)です。使用感を語る前に、まずは価格のことをお話ししなければなりません。

ハイコスパ!脅威の価格破壊ロッド

私はサーフロッドの製品情報を収集しています。それで、市場には随時100機種以上のサーフロッドがあるのですが、サーフスレイヤー登場後に実勢価格が大幅に低下した製品があるんです。

それは、シマノとダイワのエントリークラスのサーフロッド。具体例としては、NESSA BB S108M+(シマノ)やOVERTHERE 109ML/M(ダイワ)などが挙げられます。これらは2023年の秋の時点では実勢価格が2万円前後だったため、明確にサーフスレイヤーと競合していました。しかし、2024年の春までに4千円〜5千円ほど価格が低下しており、1万円台半ばにまで下落しました。

結果、サーフスレイヤーが2万円台のロッドを追い出した格好となり、同価格帯に残っているのはSURFLAT SSD S108M-P3(テイルウォーク)くらいです。これが3万円台になるとシマノとダイワのミドルクラスや、ジャクソン、メジャークラフト、ジャッカル、ヤマガブランクスなども加わって群雄割拠という状況。対するサーフスレイヤーの主要スペックはそれらの3万円台のロッドに比肩しているため、今後も長期的にコストパフォーマンスの良いロッドとしての立ち位置を維持すると思います。

レビューする上では、同価格帯のロッドが極端に少ないため単純な比較ができないというのが悩ましいところですが、ここまででお買い得なロッドだということはお伝えできたかと思います。

ブレの少ない使用感

さて、本題となる使用感のお話です。

まず、手に持つと乾いた竹のような感触がありブランクスが中空構造であることが直感的にわかります。アブガルシア独自のTAF製法と、先径に対して元径を太めにした設計(ハイテーパー系)とが相まってか、キャスト時のねじれやブレが低減されていると思います。マイクロガイドと無塗装による軽量化の恩恵もあるのかもしれません。

サーフで100m以上のロングキャストを決めるにはブレを排除することが大切だと思います。ピタッ!とティップを止められるかはアングラーのスキルによるところですが、やはりティップを止めやすいロッドというのはあります。個人的にはサーフスレイヤーは止めやすいほうのロッドです。ブレの止めやすさに限って言えば、これ以上のものを求めるなら5万円以上の価格帯になると思います。中途半端に3万円〜4万円くらいのものを買っても違いを感じにくいでしょう。

使いこなしには知識も必要

コスパ的に、これからサーフフィッシングを始める人が長期的に満足して使用できるポテンシャルがあると思います。ただし、いくつかの点で留意が必要だとも思います。

1つ目は、マイクロガイドシステムです。一般的なロッドはKガイドという定番のガイドが採用されているのですが、アブガルシアはKRガイドという新型の小口径ガイドを積極的に採用しており、サーフスレイヤーもマイクロガイドシステムになっています。

マイクロガイドシステムは従来ガイドよりもブランクスの性能を引き出せる反面、アングラー側に扱い方の悪さがあるとライントラブルとして顕在化するのが早いです(従来ガイドでもいずれはトラブルになるのでガイドが悪いわけではないです)。キャストフォームの改善やタックルのメンテナンスなど、中級者以上が取り組むような事柄が必須になってくるので、それらを「やり込み要素」として楽しめる人には強くお勧めです。

2つ目は、ロッドが備えるべき機能を最小限まで削ぎ落としてあることです。これはソルティーステージ プロトタイプのシリーズ全体に言えることで、これらの製品群はブランクスとガイドに全てを注ぎ込んでおり、あとは基本的なグリップを装着して完成、といった感じです。なので、塗装やコスメといった外観にこだわりたい人や、グリップにも機能性を求める人には物足りないかもしれません。

私に実際に起きたこととして、ヒットの瞬間にリールがガタついて慌てたことがあります。キャストを繰り返すうちにリールシートへの固定が緩んでいたことが原因です。比較対象として、ジャクソンはダブルロックナットを採用しており緩むことはありません。この差は文章で読むと小さな問題に感じると思うのですが、現実に魚を掛けてファイトが始まる瞬間というのは非常に気持ちが高まる時で、楽しい時間の始まりです。そこに「しまった!」という感情が割り込んでくるのは大変に不快です。趣味の道具には細やかな気配りも大切なのだなと認識した出来事でした。とはいえ、これはサーフスレイヤーのグリップに加点する要素がないというだけであり、特別に緩みやすいという意味ではありません。(むしろ、こういう経験がないとダブルロックナットの価値をわかってもらえないのに、あえて採用しているジャクソンへ賛辞を送るべきでしょう。)

評価を改めた点

約9ヶ月間の使用を経て、ファーストインプレッションや2ヶ月レビューの頃とは評価を変えた点もあります。

当初、新潟サーフではXSFS-1042MHはオーバースペックだと論じて、それよりも弱いXSFS-1082Mを購入したのですが、私が今一番欲しいのはXSFS-1042MHです。なぜかというと、あと少し遠投したいという状況があるから。新潟サーフは離岸堤(沖テトラ)がたくさんあり、それらの周辺を探ることで釣果を得ることはかなり多いです。それで、今は届かないけれど、あと10m伸ばせばココもポイントになるのでは?と思うことが出てきたのです。

XSFS-1082Mも遠投性能は優れていて、PE0.8号で40gのジグを投げれば100m沖にある離岸堤にぶつけることができます(そしてロストします..)。しかし、0.8号というのは16lbくらいの強度です。これでは根掛かりをどうにもできませんし、合わせるリーダーも10~16lbでは歯のある魚にあっさりと切られてしまいます。そこでPE2号の40lbに、リーダー20~30lbを合わせることで釣りの安定性がグンと増したのですが、今度は遠投性能が損なわれてしまいました。

2023年のサーフの釣果は7割が50m以内だったので遠投は不要とさえ考えていたのですが、2024年ここまでの釣果では9割が70m以上の沖です。足元にカタクチイワシが打ち上がっていても手前にはフィッシュイーターの気配はなく、現実にヒットするのは沖のみ。こうなると遠投性能は重要です。

もしも、あなたのフィールドで同じようなことを経験しているのなら、XSFS-1082MよりもXSFS-1042MHをお勧めしたいと多います。ただ、後述(初稿でXSFC-1032Mの項目に記載)していますが、遠投は手返しが悪いという欠点もあります。どのモデルがベストであるかは個人のフィールドやスタイルによって異なるので、よく吟味して選んでください。

以下は初稿時の読み物(2023.7.23)

2023年7月下旬に突然の情報発見

私がこの情報に気づいたのは2023年7月24日のこと。

連日、ソルティーステージ プロトタイプのシーバスロッドをチェックしていました。というのも、やはりアブファンとしてはアブのロッドでサーフフィッシングしたいという「欲」があるわけです。ところが現行のアブのサーフロッド(フラットフィッシュ)は発売から年数が経過しており、そのスペックは同社の製品群の中でも見劣りしていました。付け加えて、最高峰に位置付くエラディケーターにはサーフ用のロッドはありません。すると次点としてソルティーステージ プロトタイプになります。その中でもシーバス用のXSBS-1002MMHあたりがサーフのフラットフィッシュにも良いのではないかと検討を続けているところでした。

ふと、エラディケーターのロックスイーパーを再検討しようと思い立ってアブのサイトトップを表示しました。そうしたら、見慣れない製品が…

SaltyStage KR-X Surf Slayer

え!? サーフスレイヤー!? ロッド!?

アブにはサーフスレイヤーというメタルジグがあります。でも、まあ、それほど特徴がないというか、先に存在していた個性的なショアスキッドジグに対して、ラインナップを補完してきたな、というくらいに思っていました。

それがまさかのシリーズネーム!?にわかに盛り上がってきました!(先々、エラディケーター サーフスレイヤーとか出してくれないかな…希望します。)

いにしえの名竿サーフスレイヤーの存在

あれこれ調べているうちに、サーフスレイヤーとは、2013年にアブから登場したヒラメロッドの名称だとわかりました。廃盤となって久しいのですが、調べるほどに興味深いロッドです。当時のキャプションから冒頭部分を抜粋しますと、

ヒラメゲームに心血注ぐ、ヒラメハンター「元吉勝宏」が完全プロデュース。 そのヒラメ釣りに精通する元吉勝宏が、より確実に釣れる道具、本当に使える道具を求めた完成形とも言えるヒラメ専用ロッド、サーフスレイヤー。

…というもので、9’6″と10ftの2機種あったようです。いずれもMHです。なんとなく現行のソルティースタイル フラットフィッシュ(2016年登場)にもエッセンスは入っていそうですね。しかし、ハッキリと異なる点として、旧サーフスレイヤーはチタンガイドフレーム、コルクグリップという仕様。かなり感度重視だったことがわかります。その分、価格は¥60,500とハイグレードでした。

既存モデルからの大幅な刷新

さて、直近では、アブガルシアには2つのフラットフィッシュ向けロッドがあります。

  • Salty Style Flatfish
  • SaltyStage KR-X Flatfish Mobile III

ソルティーステージモバイル3のほうは市場に在庫がなく入手困難ですが、ソルティースタイルは現在も入手可能です。どちらのロッドも、MHパワー、レギュラーファスト、レングスは9’6″と10’3″の2種類という仕様です。これが新しいサーフスレイヤーになると、ML〜MHパワー、ファスト、全モデル10ft以上という仕様になります。

印象としては、昨今のサーフシーンのトレンドに合わせてきたな、というところ。また、2022年にリニューアルとなったソルティーステージプロトタイプにはすでに多彩なラインナップがあるので、シーバスモデルやライトショアジギモデルと用途が重ならないように配慮されたようにも感じます。

既存モデルと比べると大きく異なっており、設計をイチから練り直したように思います。ただ、突飛なモデルにはなっていないので誰にでも扱いやすいサーフロッドに仕上がっているのではないでしょうか。

各モデルの印象

ソルティーステージ プロトタイプ サーフスレイヤーはスピニング3機種・ベイト1機種の計4機種がラインナップされています。

XSFS-1072ML

全長10’7″
自重178g
先径1.80mm
ルアーウェイト7-45g
ベストウェイト30g
PEライン0.8-2号
パワーML
アクションファスト
希望価格(税抜)¥34,000

シリーズ中で最もフィネスなのが10フィート7インチのMLモデルです。ベストルアーウェイトは30gとのこと。フィネスもできるバーサタイルと表現したほうが適切でしょうか。

ガイドはやっぱりKRガイドコンセプト(マイクロガイドシステム)です。アブのリールに合わせるならマイクロガイドのほうがポテンシャルを引き出せると思うので、相性の良いロッドを探していたところです。ちゃんとアブが用意してくれて嬉しい!

新潟サーフでこのロッドは選択肢に入ります!

そして気になる実売価格ですが… こちらは随時調査中〜。

価格送料調査日
¥25,906プライム無料配送2023/8/31
¥23,315  〃2023/9/22
¥23,314  〃2023/10/14(プライム感謝祭)

XSFS-1082M

全長10’8″
自重188g
先径2.00mm
ルアーウェイト8-50g
ベストウェイト40g
PEライン0.8-2号
パワーM
アクションファスト
希望価格(税抜)¥34,000

ど真ん中のミディアムモデルです。ベストルアーウェイトは40gということで、100m先のポイントを狙っていける遠投モデルだろうと思います。

シーバス用のXSBS-1002MMHと使用ルアーが重なるのですが、あちらはレギュラーテーパーです。対して、XSFS-1082Mはファストテーパーです。サーフスレイヤーに共通のこととして、プラグやジグヘッドよりもメタルジグへの適性が高いそうです。縦の釣りを意識しているのかなと思います。

新潟サーフでは離岸堤を攻めたいときに遠投性能が極めて重要になります。このモデルも良い選択肢です!

こちらも価格をチェック!

価格送料調査日
¥25,906プライム無料配送2023/8/31
¥23,315  〃2023/9/22
¥23,314  〃2023/10/14(プライム感謝祭)

XSFS-1042MH

全長10’4″
自重196g
先径2.00mm
ルアーウェイト10-60g
ベストウェイト45g
PEライン0.8-2号
パワーMH
アクションファスト
希望価格(税抜)¥34,000

シリーズ最強のMHモデルは、新潟サーフでは出番がないかな、どうかな、という印象。ベストルアーウェイトは45gです。Mモデルと大きくは違わないです。

3モデルともPE0.8号〜2.0号に対応なので、パワーの違いはブランクス、特にベリーからバットの太さによるものかと思います。ダブルフットガイドではないので、根周りで強引なファイトをするようなことは想定されていないと思います。あくまでサーフロッドですね。

ブリや座布団ヒラメというのは新潟では話に聞きません。このモデルはオーバースペックだろうと思います。

ただ、2ozクラスのビッグベイトまで扱える点はちょっと楽しそうかも。

さて、気になるお値段は…

価格送料調査日
¥25,906プライム無料配送2023/8/31
¥23,315  〃2023/9/22
¥22,524  〃2023/10/14(プライム感謝祭)

XSFC-1032M

全長10’3″
自重178g
先径1.95mm
ルアーウェイト7-50g
ベストウェイト40g
PEライン0.8-2.5号
パワーM
アクションレギュラーファスト
希望価格(税抜)¥34,000

シリーズ唯一のベイトモデルです。ベイトの利点は太いラインを使いやすいことなので、このモデルだけマイクロガイドにせずPE2.5号まで対応、また、テーパーもファストではなくレギュラーファストになっています。よく考えられたモデルかと思います。

個人的に思うのは、ベイトタックルの手返しの良さを活かして近距離を密に通していくメソッドに合う気がします。やっぱり毎投100m投げていると手返しが悪いです。タダ巻きで波打ち際まで引き切ると100秒かかりますから、1時間当たり30投くらいしかできません。これを50mで60投にすればルアーをターゲットの目の前に通せる確率は2倍になります。ショートキャストを繰り返すならベイトタックルは楽ですね。

あとは、ベイト特有の操作感の高さは魅力です。クランキングの安定性、ロッドとの一体感、重心の良さ。ルアーを操作することを意識すればベイトにしたくもなります。あとは冬場ですね。グローブをしていてもキャストしやすいです。

こちらも価格をチェックしておきます!

価格送料調査日
¥25,906プライム無料配送2023/8/31
¥23,315  〃2023/9/22
¥24,346  〃2023/10/14(プライム感謝祭)

XSFS-1082Mの2か月使用レビュー(2023.12.23)

新潟サーフは荒天が増える時期なので、釣りメディアが言うような「秋のハイシーズン」というのは当てはまりませんが、それでも真夏よりは釣れる時期を2か月過ごしてメインターゲットのマゴチもキャッチしましたのでXSFS-1082Mのレビューを書かせていただきます。

扱いやすく手に馴染むサーフロッド

使い始めからこれまでに気になる箇所はなく、とても扱いやすいと感じています。「サーフゲームのど真ん中」との謳い文句に偽りなし。特にルアーウェイトに余力を持って対応している点は高評価です。荒天ゆえに40gを投げる機会が多めだったのですが、ねじれやぐらつきを感じることがなく安心して投げ続けることができました。30gを投げるときと比べてもフィールの違いが少ないので使用感が良かったです。ひとつ上にMHモデルが用意されていることから、Mは一応40gもいけますという程度なのかと思っていたので、良い意味で予想を裏切られました。Mで40gを常用できます。

15g以上のルアーなら実用範囲

下限は8gと記載されていますが、さすがにロッドを曲げ込めませんし、長さゆえに軽量ルアーの操作性が悪いので実用的ではないです。個人的には15gは欲しいと感じました。とはいえ、困ることはありません。そもそも風の条件次第で20g以下を投げることは稀なためです。

強すぎるきらいはある

これは以前から度々書いていますが、サーフゲームの趣味としての欠点として、強風に対抗して遠投するためのロッドは強すぎて、魚とのファイトの楽しさをスポイルしてしまいます。XSFS-1082Mでは30gのメタルジグが軽く100m飛びます。と同時に、40cmくらいの魚は軽く上がってきてしまいます。緊張感あるファイトは滅多にないだろうなと思います。新潟市サーフならシーバスとスティングレイ(アカエイをカッコよく言ってみただけ)くらいしか相手にならないかもです。


以上、お気に入りのモデルは見つかりましたでしょうか? この記事が参考になりましたら幸いです!