例年、2月1日は新潟県内水面漁業協同組合連合会による遊漁承認証の受付開始日となっている(らしい)。それで早速に釣具屋へ寄って申し込みをしてきた。その場で遊漁承認証を取得できた。3月1日から翌年2月末まで有効である。いよいよ私も海から遡上する準備ができてきた。
さて、先ほど「らしい」と書いたのは、昔はこういう県内一円で通用する遊漁券はなかったからだ。といってもだいぶ昔の話だが。
私が以前に遊漁券を買ったのは20年と少し前。それまで熱中していたバスフィッシングから離れて、源流域でイワナをターゲットにしたフライフィッシングばかりしていた。その頃は各水系に置かれた漁協ごとに遊漁券が異なっており、手続きをするには基本的にその水系に関わりのある釣具店を訪ねないといけなかった。つまり、週末の早朝に初場所の渓流に入るなんてことはできるわけがなく、事前に麓の街中にある釣具店に顔を出して遊漁券を取得しておくことになる。
それがいつからか連合会による県内一円で通用する遊漁券(正しくは遊漁承認証というようだ)になっていた。もちろん各漁協が発行する遊漁券もある。せっかくなので軽く紹介しておこう。
遊漁承認証って?
まずは基礎知識だ。海(外水面)や河川湖沼等(内水面)には漁業権が設定された区域がある。区域内で漁業権設定のある魚種を許可なく獲ることを密漁という。密漁の罰則は懲役または罰金である。れっきとした犯罪であり、前科がつく。お勤めの会社によっては社員の犯罪行為に対して懲戒処分を規定しているかと思う。学校の規則も同様だ。特に成人年齢も引き下げられたことだし、大学生は気を付けてもらいたい。
さて、密漁にならないためには許可を取ればよいわけである。それが遊漁承認証というものだ。これがあれば漁業権設定のある魚種も定められた区域と方法であれば獲っても良いのだ。
遊漁承認証は必須なのか?
しきりに漁業権設定のある魚種という言葉を使ってみせたのには理由がある。そう、漁業権設定のない魚種もいるからだ。密漁か否かだけで考えれば、漁業権設定のない魚種を獲っても問題はない。
ただし、漁業権設定のある魚種がヒットするかもしれないと見なされる場合、漁協は釣り人から遊漁料を徴収できる。スレ掛かりだろうが、キャッチ&リリースだろうが、漁業権設定のある魚種が釣れてしまうかもしれないのなら遊漁料を納める必要がある。これも規則で決まっていることなので、釣り場で遊漁料の徴収を受けた際、拒否すると警察沙汰になり得るから要注意である。
要するに、漁業権設定のある区域では遊漁承認証は必須なのである。
遊漁料の節約方法
こんな見出しつけるのもナンだが、バサーやアングラーの皆さんが知りたいのはこれだろうと思って書く。冒頭で触れたが、遊漁承認証には種類がある。今回、私が取得したのは新潟県で一番高いやつだ。でも、他の方法もある。比較してみよう。
発行者 | 水系 | 魚種 | 遊漁料 (年券) |
---|---|---|---|
新潟県内水面漁業協同組合連合会 | 県内一円 | いわな・やまめ・うぐい・にじます・かじか・うなぎ・こい・ふな | 13,200円 |
信濃川漁業協同組合 | 信濃川(小須戸橋から昭和大橋)・小阿賀野川・中之口川 | こい・ふな | 3,000円 (小中学生は半額) |
鳥屋野潟漁業協同組合 | 鳥屋野潟 | こい・ふな | 1,000円 (小中学生は半額) |
新潟市中央区を基準にピックアップしてみた。実は、信濃川下流域でだけ遊ぶのであれば年券でも3,000円で済む。鳥屋野潟なら1,000円だ。近所でしか釣りしないよ、という人は最寄りの漁協へ手続きすると安上がりだ。
詳しくは新潟県内水面漁業協同組合連合会のウェブサイトに載っている。「遊漁のしおり」のPDF版をダウンロードできるので熟読してほしい。
どうしても遊漁料を払うことに抵抗があるなら
遊漁料を払うことは、漁業権を買うことのように思われがちだ。バサーであれば、フナなんて釣らないのに、なんでお金を払わなきゃいけないんだ、と思うかもしれない。しかし、そもそもフナを釣る権利にお金を払っているのではない。これは権利料ではなく遊漁料なのだ。
このことは遊漁料の使途を知るとわかる。新潟県では鮎や鮭の稚魚を育てて放流しているが、そういった取り組みに使用されているのだ。あまりイメージされていないが、漁業者は水産資源を獲るだけでなく、増やす取り組みをしなければならないと義務付けられている。漁業者自身がコストをかけて種苗放流や魚礁形成を行っているのだ。
そのような漁業者の努力によって成り立っている区域で遊ばせてもらうのだから、私は遊漁料を納めることは有意義だと思っている。私はバサーではないものの、フィッシュイーター全般がターゲットであるから、まあ、これも言ってはナンだが、ベイトフィッシュを放流してくださっているわけで、回り回って自分に得があることは間違いない。広大な管理釣り場だと思えば安い出費だ。エリアトラウトの利用料は1日で数千円かかる。
あるいは他のレジャーと比べてもいい。新潟県のスキー場の共通シーズンパスは65,000円もする。熱心なスキーヤー・スノーボーダーはそれでも元が取れると思って買うのだ。それに比べれば、釣りという趣味は道具も安いし、利用料(遊漁料)も安い。いずれにせよ、他人が整備してくれている場所を使わせてもらうのだから、相応の対価を払うことは自然なことだと思っている。
おわりに
漁業者と遊漁者(釣り人)は本来は対立するものではないが、ネット上では釣り人が発信源となって遊漁料は払わなくてもいいのだという間違った主張を読むこともあるので、私も私なりに書いてみた。
ちなみにだが、あくまで中立的な立場で補足を書くと、遊漁料の徴収に積極的な漁協もあれば、そうでもない漁協もあるかと思う。つまるところ、稚魚をたくさん放流している水系ではコストも嵩んでおり、徴収の積極性が増すのは当然のことと思われる。とはいえ、漁業者の本分は遊漁者の監視ではないので、アングラー側も敵意を抱くことなく、同じ水辺に親しむ者として考えていければ良いのではないかと思う。
各漁協の規則を読むと、鮎の遊漁料の高さにびっくりしたり、幼児は無料という記載にほっこりしたり、徒手採捕が許可されていて、いやいや魚を掴み取りとか無理だろ、と思ったり、投網が許可されていて興味を持ったり、釣りサイトを眺めているだけでは得られない情報が載っているので新鮮に感じる。今は暴風雪で釣りどころではない季節であるし、お勉強してみたら意外と面白かった。
取得した遊漁承認証は3月1日から有効だ。楽しみである。