アブガルシアのスピニングロッド、Eradicator Powerfinesse(エラディケーター パワーフィネス)のインプレッションをお伝えしたい。私が使用しているのは3機種のうち最もロングレングスとなるEPFS-810MLT-TZである。別名は「PROVETTO(プロヴェット)」。イタリア語で熟練という意味だそうで、熟練者のためのモデルとのこと。なお、使い込むほどにその意味がわかってきたので本稿は都度更新を加えている。
購入時点で発売から2年以上経過していたのだが、その時は一般アングラーのインプレを見つけることができなかった。この記事が参考になれば幸いである。
ZENON 2500SHと相性抜群
そもそもだが、私はZENON 2500SHに合うロッドを探していてEPFS-810MLT-TZに辿り着いた。だからリールありきでロッドを選んだことに留意していただきたい。ZENON 2500SHは私が出かけるフィールドにおいてバーサタイル性が高いサイズで、軽量、優れた剛性、高感度が特長である。
当初、ZENONのポテンシャルがあまりに高いがために、リールとロッドの双方が性能を引き出し合うようなバランスを模索することになった。ロッドも軽量で感度に優れていることが求められ、私の場合は、50cm、60cmといったサイズの魚もターゲットになりえたのでパワーフィネスが目に止まった。レングスはサーフや大河川での遠投性を考慮して8フィート10インチに決まった。
さて、後日に知ったことになる。相性の良さを裏付けるわけではないが、実はZENONシリーズにはロッドも存在しており、そのスペックはパワーフィネスと似ているのである。画像転載が許可されていないのでリンクでの紹介になるが、USアブガルシア(https://www.abugarcia.com)を見ればZENONシリーズの全てを見ることができる。ZENONスピニングロッドのうちZENS610-4はEPFS-610MLT-TZに近しい。スペック上はEPFS-610MLT-TZの方が優れているようにさえ見える。
USアブガルシアはボートゲーム向けのラインナップが目立つ。ロッドは1ピースで、6〜7フィート台のものが多い。その点では日本のEPFS-810MLT-TZの存在は有難いと感じた。EPFS-810MLT-TZはJPアブガルシアのラインナップの中でも他に類を見ないスペックだ。マイクロショアジギングロッドよりパワーがあり、スーパーライトショアジギングロッドよりフィネスである。アジングロッドとしては強く、そして異様に長い。ロングレングスなのでバスロッドとは比較にならない。特別な一本なのである。
気に入っているポイント
ここからは個人的な感想をつらつらと述べよう。所々はスペックに触れるが、おそらくあなたが知りたいのはスペックではなく、実際の使用感、生の声だと思う。スペックの詳細はアブガルシアの公式サイトを見てほしい。
55tカーボン使用の高弾性ロッド
ルアーロッドで55tほどの高弾性カーボンを使っているロッドはほとんどない。というかアブガルシアが業界初だったのではなかったか? 高弾性になるほど軽量かつ高感度なロッドを作れるとされるが、その反面でポキッと折れやすいとも言われており、知識と経験のあるプロやハイアマチュア向けの素材ということになる。
正直、30tくらいの丈夫なロッドに慣れている私としては怖さがある。スペック上はルアーウェイト24gまで適正なのだが、長らく15gまでで日和見をしていた。気持ちが吹っ切れて20gのメタルジグをフルパワーでキャストできるようになると、15gのときよりも明らかに飛距離が伸びた。つまり、24gという表示は「なんとか背負えます」という意味ではなかったということだ。ちなみにスピニング初心者の私でも20gのメタルジグを85mほど飛ばせる(沖の目標物などで計測)。
チタンフレーム
ガイドフレームはチタン製だ。ソルトで使うのでステンレスでも不安が残る。やはりチタンがいい。釣行後は必ず水道水で洗っているが、そうできない時もあると想像してチタンにこだわった。
チタンは硬い金属なので曲がる心配もないし、総合的にいってストレスフリーで大変気に入っている。軽量性も優れるので感度向上にも役立っているらしい。
トルザイトリング
ガイドリングはSiCではなくて最上級のトルザイトとなっている。トルザイトは巷では好き嫌いがあるようだが、私は気に入っている。糸鳴りがするという指摘については、なるほど、という感じだ。
スピニングで繰り返し投げていると糸よれが生じて、次第にライン先端に集まってくる。この糸よれの山を拾って糸鳴りがするようである。この音はSiCでは聞き取ることはできなかった。トルザイトが高感度であるが故に、ライントラブルの予兆さえ教えてくれているのだと思う。
ブランクタッチ
ABUオリジナルリールシートはブランクに指が触れる形状になっており、小さな振動でも感じ取ることができる。7フィート台までなら同様のリールシートを採用しているロッドは見かけるが、ほぼ9フィートのロングロッドとなると珍しい。だが、ロングロッドほど感度を高める工夫が欲しくなるものだ。
なお、ZENONスピニングロッドも同じリールシートである。これを知って気分が高まった。
セミマイクロガイド
話題が前後して申し訳ない。ガイドセッティングはマイクロガイドシステムよりも少しだけ太めのセミマイクロガイドシステムとなっている。これによって0.6号から1.5号までのラインに対応している。1.5号のPEラインなどは相当に強いラインで、ロッドの容姿には似つかわしくないほどパワフルなゲーム展開が可能となる。
実効レングスは9’6″相当
10フィートジャストのロッドから8フィート10インチのパワーフィネスに持ち替えた時、予想よりも長さが変わらないことに気がついた。計測してみるとリールシートからティップまでの長さは15cmしか短くなっていなかった。全体では1フィート2インチも違うはずなのに、実効レングスは6インチしか違わなかったのである。
理由はリアグリップが短いことにある。長いロッドからサイズダウンする場合、リアグリップが短い9’6″のロッドをイメージすると良いかもしれない。8フィート台だと思っているとびっくりするかもしれない。
自重114g
長いのに軽いのである。これでルアーウェイト1.5gから24gまでという対応力の広さは素晴らしい。55tカーボンの恩恵があるのだろう。
ZENON 2500SHと組み合わせると262gである。クラスとしてはスーパーライトショアジギングタックルと同程度。サーフタックルやライトショアジギングタックルなら400g台となるところだ。
悩ましいポイント
さて、使用しているうちに気になることも出てきた。個人的な感想なので参考までに。
ライン選びに迷う
ルアーウェイト1.5gに対応しているとはいえ、タックルバランスを整えないとルアーが何をやっているかわからない状況は生じる。PEラインの0.8号だと微妙なので、いずれナノフィルの0.5号を試すつもりだ。
しかしその一方で、ルアーウェイト24gということを活かそうと思うと0.8号以上のPEラインが欲しい。サーフでの使用においては、ファイトよりもキャストによる負荷が大きい。0.6号くらいだと20g以上のルアーを飛ばすのは怖い。
また、ガイドサイズを活かして1.5号をセットする選択肢もある。私ならフロロよりファイヤーライン。キャスタビリティ、耐摩耗性、強度を手に入れられる。カバーも根掛かりも恐れずに攻められそうだ。バスやロックフィッシュならこのセッティングだろう。
現状、バーサタイル性を重視しており、スーパーファイヤーライン ウルトラ8の0.8号をセレクトしている。0.8号を150mということで、ZENON 2500SHにピッタリなのである。
vs 新潟の怪魚たち
ラインとも関係しているところで、仮に1.5号のPEラインを選んだ場合、ガイドが負けやしないかと気になっている。主には中型青物を想定した話だ。そして信濃川下流域をフィールドに含むが故の心配だ。
信濃川下流域にはモンスターフィッシュたちが生息する。ここはブラックバスとシーバスが混ざることで知られるが、実はそれ以外の魚が大きい。ニゴイ、マゴイ、ナマズ、カムルチー、幻の魚ウケクチウグイ。60cmから80cmなんて珍しくないらしい。新潟のフィッシングシーンでは強めのタックルバランスを勧められることもある。その昔、私もベイトタックルには2.5号のPEラインを巻いていた。
サーフでは手強いアカエイが掛かることもあるらしい。どれもメジャーな釣りではないが、怪魚に恵まれているのが新潟という土地であるようだ。パワーフィネスで耐えられるのか? これを書いている時点ではオフシーズンなのでわからない。1年後には結果が出ているだろうか。
テーパーとベントカーブ
ティップはフィネスで、ベリーからバットにかけてはパワーがある。必然的にファストテーパーのロッドとなる。基本的にファストテーパーは操作性に優れるとされるが、このプロヴェットは8’10″というロングレングス。手首のちょっとした動きでもティップは大きく振れる。すると、適合ルアーウェイトからして小型のルアーを扱うことと相まって、操作は易しいほうではない。この辺りが熟練者のためのロッドたる所以かと感じる。
また、ベントカーブについても触れておく。オモリを釣り上げるテストをした感想だ。
- 250g(約20cmの魚):ティップからベリーにかけて曲がる。全く余裕。抜き上げもできる。
- 500g(約30cmの魚):バットも曲がるが、まだ余裕がある。抜き上げはできなくもないが、したくないと感じる。
- 1000g(約40cmの魚):バットもグリップに近い根本付近から曲がる。いわゆる”満月のように”曲がるので抜き上げは不可能。
魚が水中にいる限りは浮力が働いているため重量がそのままロッドにかかることはない。だが、水面を割ってジャンプされたりすると要注意。1000g以上では上手に対応しないとフックアウトやラインブレイクも起きうるだろう。
やはりベースはスピニングのフィネスなのだと感じる。タックルバランスとしては5LB Test または10LB(Max)くらいのラインで、ドラグは1kgを基準にした。兄弟機のリアルフィネスやベイトフィネスより強いとはいえ、パワーフィネスのロッドパワーはMLなのだ。このくらいのバランス感で軽量ルアーを遠投できることにメリットを感じたい。もっと強引に魚を寄せたい人はロックスイーパーやソルティーステージ シーバスなどを候補に含めると良いかと思う。
おわりに
EPFS-810MLT-TZのインプレッションをお伝えした。また書き足すかもしれないが、ひとまずこれにて。