アメリカから日本への到着まで2週間ほど待っただろうか。ついに本家USバークレイのナノフィル(NanoFiL)を入手した!
日本版「ナノフィル カラード」との違い
始めに補足しておくと、日本市場向けにもナノフィルはある。「ナノフィル カラード」である。そちらは10m毎にカラーを変えてあるラインで、商品展開は300m巻きと100m巻き6連結という2タイプ。つまりバーチカルな釣りに便利な内容となっている。
しかし、私はおかっぱりのキャスティングで使いたかったので、わざわざ本場アメリカから元祖ナノフィルを取り寄せた。こちらは150ヤード巻き(137m)で、カラーはLow-Vis Greenである。Low-Visとはロー ビジビリティ、すなわち低視認性のグリーンカラーであることを示している。これを使いたかったのだ。
昔話になるが、90年代にモスグリーンのスパイダーワイヤーを使っていた身からするとグッとくるカラーなのである。PEラインが世に出た当時は直結で使うのが当たり前だった。そのため製品も低視認性のカラーだった。水質に合わせて緑色から茶色まで選べたものである。
私はモチベーションのために元祖ナノフィルを取り寄せたが、日本版との違いはカラーリングと巻きの長さだけであろう。
アメリカのパッケージ表示は優れている
せっかくの輸入品なので写真を撮った。パッケージ表示について少し説明がいるかと思うので、改めてご覧いただこう。
平均直径が0.13mmで、強度は6LB(2.7kg)と書いてある。日本の号数に当てはめると0.6号くらいになるだろうか。しかし、手元にあった日本製PEラインの0.6号と触り比べるとナノフィルのほうが細く感じる。参考として日本版ナノフィル カラードの0.5号を見ると、強度は8LBとある。
仮に同じものだとして、アメリカだと6LB、日本だと8LB、ということになる。実はこれ、間違いではない。
もったいぶっても仕方ないので、理解を簡単にするための図をご覧いただこう。
ラインの破断テストの結果を簡略的に示した。あるラインを4回テストして、破断した時の重さが12LB・11LB(2回)・8LBだった時、日本では12LB(Max)とか10.5LB(Avg)と表示されるが、アメリカでは最低値をとって8LBと表示される。
一応、日本の表示でも最低値を推測することはできる。この例ではMaxとAvgの差は1.5LBだから最低値は9LBだろうと計算できる。ただ、この図は意地悪に設定したので推測を下回る8LBが最低値だ。つまり日本の表示をアテにすると予想外に切れることがある。
文化や法律の違いでこのようになっているわけだが、私としてはアメリカの表示のほうが一般使用においては適切だと思う。魚種によって負荷の目安はあるのだから、切れないラインを使う方が魚にも環境にも良い。日本メーカーだって自社製品の最低値はわかっているのだから、全てを表示しないのはマーケティングの都合だろうと思うが、これではビギナーに優しくないと感じる。
最低値がわかることのメリットとして、タックルバランスを計算しやすいことを挙げる。例えば、アメリカ表示で12LB(5.4kg)のラインを最大ドラグ力5kgのリールに巻いている場合、ドラグの締め過ぎでラインが切れることは理論上ないことになる。同様にしてスイベルやスナップも強度をみて選択すれば、ウィークポイントを意図的に作ることが簡単になる。なお、一番良いのはフック強度を最も弱くすることである。
今回、0.5号あるいは0.6号にして最低強度6LB(2.7kg)というナノフィルは、非常にバーサタイル性に優れたラインだと思う。ブラックバスの50cmが概ね2kgであると言えば、最低強度が2.7kgであることの安心感が伝わるかと思う。と同時にこの細さ。ライトリグであっても投げやすく、操作もしやすいはずだ。1.5gのジグ単でならアジングも候補に含められるほど細く、しなやかなラインである。
ところで蛇足だが、この表示の違いにより、海外製のラインを買う時に強度だけみて注文すると、日本製よりも太いラインが届くことになるので注意が必要である。これを早合点して海外製は品質が悪いと思い込む方もいるらしいのだが、誤りである。
NOT A BRAID
さて、念の為に裏面もご覧いただこう。こちらもかなり重要なことが書いてある。
掘り下げると長くなってしまうので、右上のキャッチコピーに注目しよう。NOT A MONOFILAMENT. NOT A BRAID. と書いてある。
ここにも文化の違いが見てとれる。日本では、ナイロン、フロロカーボン、PEというように素材に注目しがちである。だが、アメリカでは、モノフィラメント、ブレイドというように構造に注目する。その方が良い理由がある。ブレイドはスピニングリールに不向きだからだ。
90年代の前半にPE素材のブレイドが世に出た時、これはベイトリール向けだということは日本でも知られていたと記憶している。スピニングリールの欠点であるラインのねじれはブレイド構造と相性が悪く、編み込みがほぐれることで強度が低下したり、テンションが抜けた際にエアノット(ウインドノット)が生じてしまう原因になる。
そこで1996年にバークレイが発売したのがファイヤーラインである。ブレイドを熱処理して溶かし固めてあり、スピニングリールに最適化したことを謳っているラインだ。
このジャンルはフューズド ブレイドと呼ばれ、そしてついにブレイドですらないナノフィルが登場したことによってか、今日ではサーマル フィラメントと呼んで一括りにすることもあるようだ。
ただ、どういうわけか日本ではこの概念が浸透しておらず、ファイヤーラインやナノフィルもPEラインとして分類されている。確かに素材はPEだから間違っていないとも言えるが、両者は別物である。フューズド ブレイドは表面の滑らかさや耐摩耗性がブレイドよりも優れており、一方でブレイドは直線強力では利点がある。これらは使い分けることが望ましい。
おまけ:リストア可能パッケージ
最後はゆるい話をしたい。パッケージを開ける時、豪快にべりべりっと破るのかと思ったらそうではなかった。見てほしい。
なんと、カバーを回すと開く構造だ。もちろん再収納できる。プラスチックの使用量が少なく、環境に配慮されている。それでいて美しい仕掛けなのだ。感動してしまった。しかも、ラインが巻かれているホルダーの直径は、日本でいうリーダー用のホルダーと同じくらいの直径だ。ものすごくコンパクト。軽いから輸送費も安いだろうし、う〜ん、合理的。
新潟の冬は釣りには厳しく、実釣テストは先になってしまいそうだが、今から楽しみである。引き続きレポートしたいと思う。