ショートバイトを起こしがちな魚の行動

10日間予報を見て、ため息が出てしまう。しばらく釣りは難しそうだ。そこで気晴らしのコラム。これを習慣化したい。

前回のコラムでショートバイトは調査行動だと指摘した。だが、実は他にもショートバイトになる魚の行動がある。その話をしたい。


フィッシュ・ファイト

魚は人間のような手を持っていないため、口を使って色々なことをする。捕食だけではなく、ターゲットを調べる時にも口を使う。そして攻撃にも口を使うというのが今回の話のテーマである。

攻撃に口を使うなんて当たり前だと感じるだろう。犬や鳥だってケンカするときは口で攻撃している。だが、魚同士のケンカ(やイジメ)において、どこをどのように攻撃するかを想像したことがあるだろうか? これについて魚が攻撃を受けやすい箇所を飼育経験に基づいてランキング形式で紹介してみたい。

  1. 尾ビレ
  2. 胸ビレ
  3. 側線(胴体側面)
  4. エラ蓋

上記に「腹部」を加えるかどうかは悩んだところだ。ただ、腹部は致命の一撃になり、大概はそのまま内臓を食べられてしまうので捕食行動と考える方が妥当に思われた。そこで今回は攻撃行動なので除外することにした。ただ、フックセッティングを考える上では有用と思うので覚えておいて損はないと思う。

さて、かなり細かな部位が列挙されている。捕食行動と異なり、攻撃行動は体格差を覆すという点が特徴になる。捕食行動では大が小を食うのが普通だが、攻撃行動では小が大に噛み付くことも多々ある。大型の魚は小回りが効かないので、小型の魚にまとわり付かれると意外と厳しいのである。

ここからは各項目を1つずつ取り上げて補足説明をしてみよう。

尾ビレ

狙いやすく、攻撃の効果が高い部位である。尾ビレを失うと推進力を失う。そうなれば勝負あり、というか敗者は死ぬ。攻撃した魚がトドメを刺さずとも、他のフィッシュイーターが見逃さないのだ。尾ビレの膜が裂けてしまうだけでも大打撃である。

尾ビレは移動能力が優先される部位であるためか、硬い棘などを備えていないことが多いように思う。尾ビレを攻撃される場合は防御よりも回避に重点が置かれるのだろう。また、回遊魚のように移動能力が重要な魚種においては破れるような膜が排除されている。青物を釣ったらその機能美を観察してみてほしい。

尾ビレを狙った攻撃を想像できる状況ならリアフックが効果的と言える。釣れる魚種は増えるはずである。反対に、吸い込み型の捕食をする魚を適切な重量のルアーで狙う場合はリアフックは不要とも言える。

胸ビレ

胸ビレは舵を担っている。やられると真っ直ぐに泳げない。尾ビレほどではないが大打撃になる。攻撃する魚が胸ビレを狙っているかどうかはよくわからない。なぜかというと、側線、目、エラ蓋も近くにあるからだ。あるいは近くにあるということが攻撃全体の成功率を高めているのかもしれない。

アクアリストにとってフグの仲間はヒレを優先的に狙うことで有名かと思う。歯があることが積極的理由で、口吻が短いことが消極的理由になる。アジング中にピンテールがフグに齧られるのは当たり前と考えるべきだろう。その場合は動かす速度が遅すぎる。フグより遅い魚はそういないので、アジが競争してきているのなら速く動かしてもバイトするはずだ。

余談だが、飾りのついたアシストフックなどは胸ビレに見えているのかもしれない。フグを狙って掛けられるかどうか試してみたい気もしてくる。

側線

魚には頭から尾ビレを結んだ線のあたりに側線という感覚器官がある。体表は鱗という鎧で覆われているため外界の様子がわからない。そこで鎧の隙間にセンサーを配置したかのような構造になっている。

攻撃により易々と傷つくものではないようだが、感覚器官なので強いショックを受ける。痛いのか、それともビックリするだけなのかはわからない。体格差を覆す攻撃としては効果的で、縄張りへの侵入者を退散させることができるようである。

ルアーの側面にフックを配置したものは見かけたことがない。捕食のバイトも横から襲うケースは多いので、側面フックは探究の余地があるかも?

目が急所なのはよくわかると思う。しかし、攻撃成功率の高い部位ではない。魚たちは機敏に回避するからだ。

アングラーにとっては別の問題がある。実は魚たちは攻撃行動において「それより近づいたらヤルぞ、オラ!」という威嚇を行なっている。侵入者に向かって真っ直ぐに構え、エラ蓋と胸ビレを広げて体を大きく見せるポーズが多い気がする。それを見た侵入者も応答する。コミュニケーションが存在するのである。ところがルアーは応答しないので「こいつは魚ではなく、ゴミ」と判断される。こうなると攻撃行動が起きないのでバイトが生じない。

ルアーに目玉が必要か否かについて議論があるかもしれないが、私は目玉が必要だと思う。飼育下では魚たちは目線を読んでいて、他の魚の目を盗んで勝手なことをするといった行動は観察できる。目玉はよそ見している向きに描くと良いかもしれない。

エラ蓋

滅多に傷つくことはないが、致命傷になることもある部位だ。同種間の争いで傷つくことがある、という気がする。正面切って激しく戦うと頭部周辺に傷を負いやすい。

「目」で話したことと似通ってくるが、エラ蓋も魚にとって情報量が多いかもしれない。人間の呼吸と同じく、傷病や疲労があるとエラ蓋が動くテンポが速くなる。これをアクアリストは魚の健康状態をチェックするために利用するが、魚もまたお互いのスタミナを測るのに利用しているのではないかと思う。

飼育下でイジメに遭う魚というのは、目線がキョロキョロと動いていて、エラ蓋の動くテンポが速い。他の魚に対して回避行動が多く見られる。臆病で逃げ腰なように映るのだ。これをルアーで再現できたらアタリが増えるだろうか。


おわりに

思いつきで描き始めたが、読み返してみればルアーをカスタムする時のアイデアがいくつも浮かんだ。オフシーズンの遊びとしてルアー開発なんてのも楽しそうだ。そういえばフライフィッシングでは禁漁期はフライタイイングをするものであった。ルアーもそうなればいいのだな。

ショートバイトに困っているという方は、魚種の性質を調べたり、フックセッティングを変えるとか、アクションやリトリーブスピードを変えると解消できるかもしれない。お役に立てば幸いである。