時代の寵児「ケイムラ」

ルアーフィッシングは25年ぶりである。久方ぶりに釣具店を物色していて1つのことに気が向いた。ルアーカラーに記された「ケイムラ」とは、なんだ?


ルアーには定番カラーというものがある。ソルト用ならばイワシを模した「イワシカラー」、ヒラメに実績があるとされる「ヒラメゴールド」などだ。そして「ケイムラ」なるものも定番カラーのようなのだが、一見したところ一貫性がないカラーパターンに思えた。あー、これはわかったぞ。きっと著名なアングラーがプロデュースしたルアーなのだろう。本名が「村田 圭」とかだろう。


「村田 圭」は時代の寵児とみえて、ありとあらゆるルアーをプロデュースしているようだった。メーカーの垣根さえも越えているのだ。これはプロアングラーではなし得ない。神格化された存在。どうやら「村田 圭」は今の時代におけるルアーフィッシングの神様らしい。


違和感を覚えたのは「ケイムラ」のサビキ仕掛けを見たときだった。これはエサ釣りの仕掛けである。「村田 圭」、お前はルアーフィッシングの神様じゃないのか? サビキまでプロデュースするなんて、ちょっと無節操すぎないか?


Googleで検索するということも25年前にはなかったことだ。調べればすぐにわかった。「ケイムラ」とは「蛍光紫色」のことなのだった。海水中では480nmくらいの波長の光が最も通りやすいらしい。人間の目には正にマリンブルーに見える波長だ。なるほど、「ケイムラ」とは、波長をコントロールすることで海水中に光を通そうという狙いなのだろう。単純に太陽光をミラーで反射するよりも通りそうではある。ただ、魚は紫外線も見えているはずであるから、わざわざ波長を変えなくともミラーで十分な気もするが、流線形をしたルアーではミラーの効果が薄いから、やはり「ケイムラ」なのか。特に日が昇る前の時間帯に効果的らしく、確かに私の釣果も日の出前と日の入り後だった。

人間は目の悪い動物である。魚からは「ケイムラ」のルアーはどんなふうに見えているのか。もし自分が魚になったら見てみたいが、ルアーに引っ掛かるのはイヤだな。